外国人スタッフを介護福祉士に合格させるには?―まず押さえるべき3つの前提
まず最初に押さえるべきなのは、「合格させたい」という気持ちだけでは実現できない、いくつかの前提条件があるという事実です。介護福祉士国家試験は誰でも受けられるわけではなく、在留資格や日本語能力、実務年数などに関する要件をクリアしている必要があります。この章では、具体的な支援に入る前に、施設として必ず確認しておくべき3つの重要なポイントについて解説します。
受験可能かどうかを確認する(在留資格・実務年数・学歴など)
まず最初に確認すべきなのが、その外国人スタッフが「受験資格を満たしているかどうか」です。どれだけ熱心に働き、将来に意欲があっても、受験資格がなければ試験を受けることはできません。
介護福祉士国家試験の受験資格には、以下のような条件があります:
- 実務者研修の修了
- 3年以上の介護実務経験(常勤で540日以上)
- 法律上認められた在留資格(例:技能実習3号、特定技能、留学生など)
例えば、技能実習2号の段階では受験資格がありません。3号移行後や在留資格変更が必要になる場合もあります。本人がどの在留資格に該当するか、どのくらいの経験年数があるかを、まず書類ベースで確認しておくことが重要です。
なぜ合格が重要なのか?雇用側が知るべき制度の変化とメリット
「資格は本人のためのもの」と思っていませんか?実は、施設側にとっても介護福祉士合格のメリットは大きいのです。
近年の制度では、介護福祉士資格を持っていることで在留期間の更新がしやすくなるだけでなく、永住権申請の可能性が開けるという点で、外国人本人にとって非常に大きな意味を持ちます。これにより、職員の離職リスクを減らし、長期的な雇用につなげることができます。
さらに、介護福祉士の資格を持つことで、チーム内での役割分担が明確になり、戦力化が進むという現場のメリットもあります。採用だけでなく、「育てる」ことがいかに重要かを、施設として再認識する必要があります。
資格取得で変わる就労年数・キャリア・定着率
介護福祉士に合格することで、外国人スタッフの働ける年数が延びるというのは大きなポイントです。例えば、技能実習生であれば、原則3〜5年で帰国する流れになりますが、資格を取得すれば「介護ビザ」への変更が可能になり、何年でも継続して働ける環境が整います。
また、資格があることでキャリアアップや昇給にもつながり、本人のモチベーションも飛躍的に向上します。その結果、「資格を取ってもすぐ辞める」というリスクを減らし、施設全体としての人材定着率を高めることができます。
つまり、介護福祉士への合格は、個人の成果であると同時に、施設全体の人材戦略の要でもあるのです

外国人スタッフのための合格支援「5つの実践ステップ」
「介護福祉士に合格してほしい」と願っていても、現場が忙しい中、何をどの順番で支援すればいいのか分からず、手つかずになっている施設も少なくありません。しかし、ポイントを押さえた“5つのステップ”に沿って進めていけば、特別な人材やコストがなくても、現場でできる支援が実現します。この章では、現実的かつ効果的な合格支援の進め方を具体的にご紹介します。
Step1:受験資格と本人の希望を確認する面談を
支援の第一歩は、本人の受験資格と受験意欲の確認です。制度上の条件を満たしていても、本人に明確な意思がなければ継続的な学習は難しく、逆に「受けたいけど何から始めればいいか分からない」という職員も多くいます。
そのため、まずは面談の機会を設け、以下のようなポイントを丁寧に確認します:
- 現在の在留資格と就労年数
- 日本語の自信の有無
- 将来のキャリアビジョン(永住希望・家族帯同など)
ここで大切なのは、「受ける?受けない?」と単純に聞くのではなく、本人の不安や迷いを共有し、施設側が一緒に支える姿勢を見せることです。これが、支援の信頼関係の土台になります。
Step2:日本語力の把握と学習環境の整備(教材/eラーニング)
介護福祉士国家試験の壁の一つが「日本語の読解力」です。介護の知識があっても、設問文が読み解けずに失点するケースが目立ちます。したがって、まずは本人の日本語力(目安はJLPT N2レベル)を把握することが必要です。
把握したレベルに応じて、適切な学習環境を整えましょう。たとえば:
- 施設内に学習時間を週1回確保
- 外部のeラーニング講座や通信教材の導入
- わかりやすい日本語で書かれた問題集の選定
ポイントは「現場で働きながらでも続けられる形」にすることです。1日30分の積み重ねでも、1年後には確かな力になります。
Step3:介護福祉士試験の勉強計画づくり(過去問・模試活用)
次に必要なのが学習のペース配分と目標設定です。外国人職員の多くは初めて国家試験を受けるため、どのように勉強すればよいか分かっていません。ここで施設側が「一緒に学習計画を立てる」サポートが効果的です。
たとえば以下のようなスケジュール感が現実的です:
- 4〜6か月前:全体の範囲を一周(講義・動画)
- 3か月前:過去問演習・弱点補強
- 1か月前:模擬試験で最終チェック
「学習スケジュール表」を配布して貼り出したり、毎週の進捗確認を行うと、本人のモチベーションも保ちやすくなります。
Step4:現場の協力体制を構築(勤務調整/声かけ/モチベーション管理)
学習と仕事を両立するためには、現場全体の協力が不可欠です。試験直前になって「全然勉強できなかった」とならないよう、学習時間を確保するための勤務調整や、周囲のスタッフからの声かけ支援が重要です。
例えば:
- 学習日のシフトを軽めに調整
- 上司や先輩が「あと何日だね、がんばって」と声をかける
- 合格した先輩からアドバイスをもらう場を作る
小さなサポートの積み重ねが、「一人じゃない」という安心感につながります。
Step5:試験申し込み~合格後のフォローまで継続支援
忘れてはならないのが、試験申し込みのサポートと、合格後のフォローアップです。受験のための書類作成や証明書の取得など、日本語が不自由な職員にとっては大きなハードルです。ここを採用担当や管理者が伴走することで、安心して試験に臨めます。
また、合格後のフォローも大切です。合格のお祝い、昇給や職務内容の見直し、今後のキャリアパス提示などを通して、「努力が報われた」と実感させることが、長期的な定着につながります。

よくある失敗とその対処法―支援がうまくいかない施設の共通点
外国人スタッフに対して支援をしているつもりでも、うまくいかない…そんな声を現場からよく耳にします。その原因の多くは、知識不足や支援の“設計ミス”にあります。この章では、ありがちな3つの失敗と、それをどう回避すればよいかを具体的に解説します。「なぜ頑張ってもうまくいかないのか」を明らかにし、効果的な支援体制の構築につなげましょう。
よくある誤解:「N3あればなんとかなる」
介護福祉士試験には専門知識だけでなく、高度な日本語読解力が求められます。そのため「N3があれば合格できるだろう」と考えて支援を始めると、合格率が伸びずにがっかりするというケースが非常に多いのです。
実際には、問題文は長文かつ複雑な表現が多く、最低でもN2レベルの日本語理解力が必要です。また、選択肢の微妙な違いを読み取る能力も問われます。
対処法としては、N3合格がゴールではなく、“N2相当の日本語力+試験形式への慣れ”を目指して継続的に支援することが大切です。
よくある失敗:「現場任せで支援が形骸化」
「本人のやる気次第でいいよね」「現場がちょっと教えてあげれば十分」といったスタンスで支援を始めた場合、いつの間にか誰もフォローしていない状態になってしまい、結局うやむやに終わることが少なくありません。
これは支援責任者やスケジュール管理の不在が原因です。支援は「仕組み化」されて初めて、現場でも継続できます。
具体的には:
- 管理者・教育担当者・現場リーダーで支援役割を分担する
- 毎月の支援進捗を見える化し、定例会議で確認する
- 学習状況を記録し、フィードバックを行う
支援を“場当たり的”ではなく、チームで取り組むプロジェクトとして捉えることが大切です。
解決策:「誰が何をいつ支援するか」体制とスケジュールを見える化する
支援がうまくいっている施設では、支援計画が目に見える形で共有されています。「誰が」「どのタイミングで」「どんな支援を行うのか」を紙やクラウド上で管理し、関係者が常に確認できるようになっているのです。
たとえば:
- 支援カレンダーをホワイトボードに掲示
- 進捗管理表をGoogleスプレッドシートで共有
- 支援マニュアルを配布して対応を統一
このように可視化することで、支援の質が安定し、本人も安心して学習を続けることができます。曖昧なまま放置されない体制を作ることが、合格への近道です。

成功している施設の取り組み事例から学ぶ
「うちには無理かもしれない」「忙しすぎて支援どころじゃない」―そんな声をよく聞きますが、実際に外国人スタッフの合格を実現している施設も数多く存在します。特別なリソースがなくても、やり方次第で成功できるのです。この章では、実際に成果を上げている施設の事例をもとに、再現性の高い取り組みを紹介します。
合格者を出した施設のリアルな支援法(週1学習時間/模試導入など)
ある中規模の介護施設では、2名の外国人スタッフが介護福祉士試験に合格しました。成功の鍵は、**「週1回・1時間の学習時間を勤務中に確保」**したことです。
この施設では、「木曜の15時〜16時は学習時間」と決め、現場全体で支援体制を敷きました。また、試験2か月前からは過去問を用いた模擬試験を導入し、本人の理解度を数値化・可視化しました。
これにより、スタッフ本人の学習習慣が定着しただけでなく、周囲のスタッフも「この時間は支援の時間」と意識するようになり、職場全体で応援ムードが醸成されていったのです。
外部サービスを活用したコストパフォーマンスの高い支援例
「社内に講師がいない」「教材を選ぶ時間がない」と悩む施設もありますが、外部リソースをうまく活用することで、少ない負担で支援を実現している事例もあります。
ある特養では、月3,000円のeラーニング教材を導入し、本人がスマホで通勤中に学習できる仕組みをつくりました。管理者は週に一度、進捗画面を確認し「どこまで終わったか」を軽くヒアリングするだけ。
このように、「高額な研修」ではなく、現場に負担をかけず継続できる支援設計が、現実的かつ効果的な方法です。本人の学習スタイルに合わせたツール選びが成功のカギになります。
合格後の待遇改善とキャリア支援で離職率が半減したケース
合格したあとの支援も見逃せません。ある介護施設では、外国人スタッフが介護福祉士に合格したタイミングで基本給を1.5万円アップさせ、翌月からサブリーダーとしての役割を新設しました。
その結果、本人は「認めてもらえた」と強く実感し、その後も3年以上離職せずに在籍しています。さらに、その姿を見た後輩スタッフが「自分も取りたい」と言い出し、学習意欲の連鎖が起きています。
合格という成果を待遇や役割でしっかり評価する文化が、職場の雰囲気と定着率を大きく変えるのです。

支援に活用できる制度・機関まとめ(採用担当向け実用リンク集)
「支援したい気持ちはあるけれど、人手も予算も足りない」―そんな悩みを持つ採用担当者の方にとって、外部の制度や支援機関を上手に使うことはとても重要です。実は、外国人介護人材の資格取得支援のために使える公的制度や無料サービス、専門機関は意外に多く存在しています。この章では、現場で今すぐ活用できる具体的な制度・支援リソースをご紹介します。
公的制度・助成金(修学資金貸付・外国人介護職支援事業など)
まず活用したいのが、都道府県や国が提供する支援制度や助成金です。
たとえば、以下のような制度があります:
- 介護福祉士修学資金貸付制度(都道府県)
→ 介護福祉士を目指す職員に年間最大50万円の貸付(返済免除条件あり) - 外国人介護人材支援事業(厚労省系)
→ 研修費・教材費・通訳支援などを補助
これらの制度は、年度によって条件が変わるため、定期的な情報確認が必要です。まずは自施設の所在地の都道府県の福祉人材センターに問い合わせてみるのが確実です。
無料・有料の教材・研修サービス一覧(行政・NPO・民間)
外国人向けの学習教材は、いまや市販の書籍だけでなく、行政・NPO・民間企業が提供する多様なサービスから選ぶことができます。
例として:
- 【無料】厚生労働省「介護の日本語」教材PDF
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001184460.pdf
- 【無料】外国人介護職支援センター(多言語動画・解説)

- 【有料】ニチイ、U-CANなどのeラーニング(月額3,000円~)
特に、動画・音声つき教材や、ふりがな付きの問題集などは、外国人にとって学びやすく実践的です。本人のレベルや生活スタイルに合わせて、無理なく使えるものを選ぶことがポイントです。
専門家や通訳ボランティアを活用した学習サポート事例
「日本語が分からないから教えられない」という声もありますが、通訳ボランティアや多言語対応スタッフの協力を得ることで、学習のハードルを大きく下げることができます。
たとえば:
- 地域の国際交流協会に相談し、通訳者を紹介してもらう
- 外国人支援NPOと提携し、学習会を開催する
- オンラインで母語サポートが受けられる外部講師を紹介してもらう
支援を外に“開く”ことで、施設内だけではできない柔軟な支援体制が構築可能です。「自分たちだけで何とかしよう」と抱え込まず、地域や外部の力を借りることが成功のカギとなります。

まとめ:外国人を“介護福祉士”に育てることは、人材定着と施設の未来への投資
これまでご紹介してきたように、外国人スタッフを介護福祉士に育てることは、単なる「資格支援」ではなく、施設の人材戦略そのものです。即効性のある取り組みではないかもしれませんが、長期的に見れば「人が辞めない職場」「戦力が育つ現場」をつくる、最も有効な手段と言えるでしょう。
「うちでは無理」ではなく「今からなら間に合う」
「外国人に国家資格は難しい」「支援は手間がかかる」と思われがちですが、実際には多くの施設で合格事例が生まれています。そして共通しているのは、最初の一歩を早く踏み出したということです。
制度や支援体制が整ってきた今こそ、「うちでもできるかもしれない」と視点を変え、今から育成を始める価値を見出すべきタイミングです。
採用から育成まで支援すれば、信頼される職場になり定着率も上がる
外国人スタッフは、日本での生活や仕事に対して多くの不安を抱えています。そのなかで「この施設は自分の成長を本気で応援してくれる」と感じられたとき、本当の意味で“職場に定着”するのです。
合格をゴールにするのではなく、その後のキャリアパスや待遇まで見据えて支援することで、「この職場で働き続けたい」という気持ちが生まれます。それが結果として、施設の人材安定に直結します。
合格はゴールではなく、活躍と貢献が続く“スタートライン”
介護福祉士に合格したその日が、本人にとっても施設にとっても、新しいスタートです。責任感が芽生え、チームの一員としての自覚が深まり、現場の雰囲気も変わります。
介護の質も向上し、他の外国人スタッフにも好影響が波及していく―そうした好循環を生む最初の一人を育てることが、施設全体の未来を変えるきっかけになります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この取り組みが、「人材が定着し、成長する施設づくり」の第一歩となることを願っております。
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※本記事は2025年5月時点の情報に基づいて執筆されています。今後、法改正・制度運用変更等が行われる場合がありますので、最新情報は出入国在留管理庁やJITCOの公式発表をご確認ください。※掲載されている事例の一部は、取材結果を元に再構成しています。個人や企業が特定されないよう一部内容を変更しています。※記事内に記載された制度情報・運用情報は、法人向け人材採用の判断材料としてご活用ください。個別ケースへの適用にあたっては、専門家や支援機関への相談を推奨します
※ 本記事で紹介している各国の「性格傾向」や「国民性」については、現場で多く聞かれる一般的な印象・傾向をもとにしています。当然ながら、個々の人材には多様な背景や個性があり、一概に国籍だけで性格や適性を判断することはできません。採用にあたっては、国籍だけでなく、人柄や価値観、コミュニケーションの姿勢といった“個人としての特性”を丁寧に見極める視点が重要です。




